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雑感、星新一 [読書]

ショートショートは、本読みとして、一度は経験する道なのだろう。

出会いは、中学校の国語の教科書にあった、「繁栄の花」。
オチのごろ合わせとブラックさに、子供ながら、戦慄に似た気持ちを抱く。

それから、「ボッコちゃん」、「ノックの音が」、「宇宙のあいさつ」、
「マイ国家」、「ようこそ地球さん」等々、大学まで立て続けに読んだ。

ショートショートが面白いのはもはや当然だが、ノンフィクションもよい。

「明治・父・アメリカ」や「明治の人物誌」は、
坂の上の雲を追う明治日本の群像と、父親である星一の姿が活写される。

父の事業失敗を物語る「人民は弱し 官吏は強し」では、
政争に巻き込まれた星一が、内務官僚の抵抗で許認可が得られなくなる
様子や、無実の阿片令違反で刑事被告人にされてしまう姿などが、
淡々と語られる。

父親の悲運を記しながら、憤懣を極力抑えた客観的な筆致が、かえって凄まじい。

今回改めて思ったのだが、星新一は、平明な日本語を連ね、 読者を異界へ導く。
ある評者がその文体を金平糖の上品な甘さに例えていたが、 それでは足りない。

金平糖ならば、その中にaddictiveなドラッグが仕込まれたボンボンに、 違いない。
酒飲みの言葉でいうなら、澄み切った冷たいウオッカだろうか。

口当たり良くページをめくれば、いつの間に酔い痴れている、みたいな。

久しぶりの星新一を読みつつ、いつの日か、危険さに気がついた大人が、
ショートショートを18禁にするのではないかとも思う。

むしろその方が、星新一にとって本望ではなかろうか。なんて。

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【読書】男の花道(杉作J太郎) [読書]

蒸し暑い週末、ちょっと普段と毛色を変えて、杉作J太郎氏の『男の花道』を読んでいました。

マンガ、コラム、映画監督、ラッパー、タレントなど多彩な活躍を見せる杉作氏のマンガ+コラム。決して巧みな絵というわけではなく、バカ話にまみれつつぽつりぽつりと染み出るような文章が流麗というわけではないのですが、それらの合わせ技は、どこか切なく、どこかもどかしく、男心に不思議と刺さります。

何か、実家の片隅にある埃をかぶったおもちゃ箱の中を30年ぶりにみたような、そんな感覚。敢えて言えば、過剰なまでのリリシズム。

おそらくそれは、日常生活を送るために必要なものではないでしょう。しかし、それが人間の一部であることもまた、事実だと思います。日常にふと疲れた男性や、男心のめんどくささを覗いてみたい女性に、オススメの一冊です。

https://www.amazon.co.jp/%E7%94%B7%E3%81%AE%E8%8A%B1%E9%81%93-%E3%81%A1%E3%81%8F%E3%81%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E6%9D%89%E4%BD%9C-J%E5%A4%AA%E9%83%8E/dp/4480420983

【読書】経済成長は不可能なのか [読書]

「経済成長は不可能なのか」(盛山和夫)読了。

著者は経済学者ではなく社会学者だが、まともな知識人がまともに考えてまともに
書いた本な感じがして、面白かった。

テーマは、失われた20年という長いデフレ不況の要因と解決。

これまで、様々な専門家や経済学者が議論してきた論点。行財政改革の不徹底や、
企業の生産性の鈍化、金融政策の不備などなど、その言説は百花繚乱。

さながら、どこが卵か鶏やらの錯綜したウロボロスのようである。

著者は、「経済学説なるものは自明に正しいものはほとんどない」とした上で、
「経済現象のメカニズムにさかのぼりながら、この論争にあえて切り込んで」みる。

そして、行財政改革や歳出削減が必ずしも長期のデフレ不況を解決するわけでは
ないことを皮切りに、規制緩和など、巷間言われている要因を一つ一つ検討していく。

まるで結び目を解きほぐすようなその思考過程の行き着く先は、民間の資金需要、
特に企業の設備投資意欲の減退であり、つまり企業の「儲かる」見込みに関する
悲観的な見通しである。

さらにその要因を突き詰めれば、国内経済の空洞化をもたらす「円高」と市場の縮小を
予想させる「少子化」にたどり着く。

そこで、著者はまず1985年のプラザ合意による急速な円高に着目した。失われた20年
を、円高の「調整のために支払われた残酷なコストであった」と言い切ったのである。

この認識の下、日本経済をどのように経済成長の軌道に乗せるかという検討が進む。
経済成長をしなければ日本人全体の生活水準は維持できない。課題は4つ。

・デフレ不況
・財政難
・国の債務残高
・少子化

いずれも、あちらを立てればこちらが立たぬという課題ばかりである。

著者は、これら全てが重要であるとしつつも、その解決の順序を明確にしている。
つまり、デフレ不況と少子化である。

ユニークなのは、デフレ不況からの脱却と少子化の緩和という目的達成のためには、
政府規模の肥大化や国債残高の増加を一切恐れていないことだ。

デフレ不況から脱却し、少子化緩和の見通しが立てば、企業の投資意欲は回復し、
生産性も向上することから経済成長を果たすことができる。それによって財政難や
国債残高の減少を進めればよいというロードマップが敷かれている。

そして、本書の最終章では、ロードマップの実施により経済成長を果たす場合の
シミュレーションが、いささか駆け足ではあるが示されている。

おそらく、日本の政策論争で足りないのは、施策のパッケージとその順序と時間軸、
すなわちロードマップなのだと思う。戦略といってもいいかもしれない。

多くの経済学者ないしは政策担当者の意見は多く一般論として正しいのだと思う。

しかしそれは課題解決の一部に過ぎず、しかも経済成長を果たしていくために、時間軸の
どの段階で行われるべきか明示されてないのは、確かに不満であった。

その意味では、個々の経済学のタコツボに閉じこもっている学者や専門家の意見を
縦横に駆使して戦略を作って見せた本書は、知的に自由な本として楽しめた。

大きな目的のために時間軸を作って粛々と進めていく、わかっちゃいるけど、
自分の人生には、なかなか応用できないわなあ。。。

などと、読了後つい嘆いてしまった初夏のある日なのでした。

【読書】フィリピン―急成長する若き「大国」 [読書]

日本では、フィリピンの一般的なイメージというと、バナナやフィリピンパブ、そしてかつてのマルコス政権や現在のドゥテルテ政権など、経済的に豊かではなく、不安定な政権と強権政治のイメージが強いと思います。しかし、2000年代以降の政治の相対的安定を背景に、現在、フィリピンは順調な経済成長を果たしているようです。

背景の一つは、人口増加と人口構造。フィリピンの人口はすで一億人を越え、ASEAN諸国ではインドネシアに次ぐ人口大国です。また、生産年齢人口比率が上昇するいわゆる人口ボーナス期が、2050年ころまで続きます。もう一つが、国民の高い英語力を背景とした、海外への労働力輸出と、コールセンターなどのBPOの受注拡大による、可処分所得の向上と、それによってもたらされる個人消費の拡大。さらにもう一つ、相対的な政治の安定に伴う、財政健全化やインフレ抑制といったマクロ経済政策の成功が挙げられています。

とはいえ、スペイン、アメリカなどの殖民地時代から続く土地制度による貧富の差や、雇用を生むであろう製造業の弱さ、テクノクラートの少なさなど、リスクもあります。

外交・安全保障面では、近年中国の軍事的な威嚇への対処が課題です。日中両国に挟まれ、かつ軍事的にはアメリカでも、経済的に中国を無視できないフィリピンは、地政学的に難しい舵取りを迫られています。

日本としては、フィリピンの経済成長に引き続き手を差し伸べ、あるいは利用しつつ、相互の分業体制を作るとともに、中国の軍事力誇示に対して共同戦線を作りたいところです。日本とは、ODA等を通じ概ね良好な関係を維持していますが、殖民地支配などの歴史問題を抱えていることも事実です。中国に付け入る隙を与えないことが必要なのかもしれません。

【書籍紹介】
http://www.chuko.co.jp/shinsho/2017/02/102420.html

【読書】我が闘争 [読書]

GW中なので普段読まない本にチャレンジしようと、ヒトラーの『我が闘争』読んでいます。

ヒトラーの生い立ちから、自身が兵卒として参加した第一次大戦を巡るドイツの対応とその問題点の描写、ドイツの抱える問題の背景にいるユダヤ人、そして、それを解決する国家社会主義(≒ナチズム)と続きます。現代日本人にとってはいささか冗長であり、差別的・侮蔑的表現に溢れるのも鼻につきますが、全体の流れや論旨自体は非常にシンプルです。

個人的には、「ユダヤ人」を「グローバリゼーション」に置き換えると、現代のナショナリズムの高まりを『我が闘争』のロジックである程度説明することさえできると思いました。

おそらく、『我が闘争』のシンプルなロジックや明白な答えは、戦争に敗れ、英仏から天文学的な賠償請求をされ、自信を失った当時のドイツ人にとって魅了されるものだったのでしょう。しかし、当たり前ですが、社会問題の多くの原因や背景は非常に錯綜しており、シンプルなロジックで全て解決できるものではありません。

単純な答えを求めるのではなく、複雑な割り切れない状況を一つ一つ解きほぐそうとする大人の知恵の集積こそが、ヒトラーの亡霊を葬る手段なのかもしれないと感じました。

≪我が闘争≫
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%8F%E3%81%8C%E9%97%98%E4%BA%89-%E4%B8%8A-%E2%80%95%E6%B0%91%E6%97%8F%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E7%9A%84%E4%B8%96%E7%95%8C%E8%A6%B3-%E8%A7%92%E5%B7%9D%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%92%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%BC/dp/404322401X