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向田邦子と石原慎太郎でグダグダ [読書]

『父の詫び状』(向田邦子)を読んでいたら、ふと、
『我が人生の時の時』(石原慎太郎)を思い出した。

共通項は、生と死。

後者が、ギリギリまで迫る死から生を炙り出すのに対し、
前者からは、軽やかな日常性にピタリ寄り添う死が香る。

二人の個性は明白に異なるはずなのに、なぜか、
生と死が織りなす模様には、似た絵柄が透ける。

それは少年時代に戦争を抱え、幼心に死ぬかもしれないと
世代全体が感じた人々の、共通認識なのかもしれない。

もしそうであるならば、経済大国の完成と没落を、
リアルタイムで目の当たりにしている我々世代の
共通認識とは、何なのだろうか。

そんなものは、スキゾキッズたちがフレニーの中に
分解してしまったのだろうか。価値観の多様化。

個性と自由の遠心力は、僕等を、それぞれ異なる星の人々
に変えてしまったのかもしれない。

だからと言って、今更別の生活を営むことはできない。

誰にも顧みられること無く、一人ぼっちの宇宙戦争を戦い、
敗れ、そして野垂れ死ぬ。

戦中世代が、圧倒的な死の影に怯えつつ手を携えて生きてきた
とするならば、僕らの世代は、各々ありふれた悲惨を受け止めて、
独りで死ぬだろう。

孤立が普遍的だなんて、どこか逆説的で面白い。

そう考えると、21世紀の日本を面白く考えられる
一つの羅針盤が、見えそうだがやっぱり見えない。

結局どうしようもないというわけか。やんぬるかな。

さて、グダグタな思考はこの位にして、
プロレタリアートに戻ろうかね。

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『狼眼殺手』刊行! [読書]

機龍警察シリーズの最新刊、『狼眼殺手』が9月7日刊行されました!

これまでも、アイルランド独立派の武装組織、ロシアマフィア、チェチェンの女性テロリスト集団などと戦ってきた警視庁特捜部。今回は、国内を揺るがす一大産業プロジェクトに関する疑獄事件と、それにまつわる連続殺人事件の捜査に踏み込みます。

刑事部の捜査一課、捜査二課といった警視庁部内の調整はもちろん、総務省、経済産業省、地検特捜部などとの駆け引きや、連続殺人事件の被疑者である暗殺者の真の狙いに翻弄される特捜部の面々。捜査二課の財務捜査官や国税の担当官など、新たなプレーヤーも登場し、事態はただただ混沌としていくことに。

これまで謎しかなかったにも関わらず、今回若干のプライベートを見せることになる警視庁の沖津特捜部長、混沌とした状況を打開すべく、思考し、判断し、そして乾坤一擲の賭けに出たその結末は、脳髄に冷や汗をかかせるのに十分です。

ネタバレしかねないので、紹介はここまで!

なお今回も、性懲りも無く執筆協力をしています。

*打ち合わせの様子はこちら*
 『とある作家の良心~月村さんの場合』
 http://daily-news-portal.blog.so-net.ne.jp/2016-02-28-1

月村さんによれば、『狼眼殺手』はこれまでのシリーズの中で最長だったとのこと。原稿を読んでいる時点では、むしろ疾走感をすら覚えるような読後感であり、率直に驚いてしまいました。このこと一つとっても、月村さんの読ませる力は、ここに来てますます進化しているのだと確信します。

映画も音楽もゲームも良いでしょう。

しかし、脳を掘り起こし、見えない像を見せ、聞こえない声を聞かせ、あるはずの無い思いを掻き立て、物語として全てを浄化する、そんな活字の魔力は、エンターテインメントとして極上のものと言えるのではないでしょうか。

冒険小説であり、ミステリ小説であり、警察小説であり、政治経済小説でもあり、どの角度から読んでも楽しめるまさにバーリトゥード。秋の夜長、もし物語に惑溺する感覚に浸るのであれば、『狼眼殺手』は推しの一冊だと思います。

---【amazonの紹介】--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
経産省とフォン・コーポレーションが進める日中合同プロジェクト『クイアコン』に絡む一大疑獄。特捜部は捜査一課、二課と合同で捜査に着手するが何者かによって関係者が次々と殺害されていく。謎の暗殺者に翻弄される警視庁。だが事態はさらに別の様相を呈し始める。追いつめられた沖津特捜部長の下した決断とは――生々しいまでに今という時代を反映する究極の警察小説シリーズ、激闘と悲哀の第5弾。

https://www.amazon.co.jp/%E6%A9%9F%E9%BE%8D%E8%AD%A6%E5%AF%9F-%E7%8B%BC%E7%9C%BC%E6%AE%BA%E6%89%8B-%E3%83%8F%E3%83%A4%E3%82%AB%E3%83%AF%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89-%E6%9C%88%E6%9D%91-%E4%BA%86%E8%A1%9B/dp/4152097094
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雑感、星新一 [読書]

ショートショートは、本読みとして、一度は経験する道なのだろう。

出会いは、中学校の国語の教科書にあった、「繁栄の花」。
オチのごろ合わせとブラックさに、子供ながら、戦慄に似た気持ちを抱く。

それから、「ボッコちゃん」、「ノックの音が」、「宇宙のあいさつ」、
「マイ国家」、「ようこそ地球さん」等々、大学まで立て続けに読んだ。

ショートショートが面白いのはもはや当然だが、ノンフィクションもよい。

「明治・父・アメリカ」や「明治の人物誌」は、
坂の上の雲を追う明治日本の群像と、父親である星一の姿が活写される。

父の事業失敗を物語る「人民は弱し 官吏は強し」では、
政争に巻き込まれた星一が、内務官僚の抵抗で許認可が得られなくなる
様子や、無実の阿片令違反で刑事被告人にされてしまう姿などが、
淡々と語られる。

父親の悲運を記しながら、憤懣を極力抑えた客観的な筆致が、かえって凄まじい。

今回改めて思ったのだが、星新一は、平明な日本語を連ね、 読者を異界へ導く。
ある評者がその文体を金平糖の上品な甘さに例えていたが、 それでは足りない。

金平糖ならば、その中にaddictiveなドラッグが仕込まれたボンボンに、 違いない。
酒飲みの言葉でいうなら、澄み切った冷たいウオッカだろうか。

口当たり良くページをめくれば、いつの間に酔い痴れている、みたいな。

久しぶりの星新一を読みつつ、いつの日か、危険さに気がついた大人が、
ショートショートを18禁にするのではないかとも思う。

むしろその方が、星新一にとって本望ではなかろうか。なんて。

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【読書】男の花道(杉作J太郎) [読書]

蒸し暑い週末、ちょっと普段と毛色を変えて、杉作J太郎氏の『男の花道』を読んでいました。

マンガ、コラム、映画監督、ラッパー、タレントなど多彩な活躍を見せる杉作氏のマンガ+コラム。決して巧みな絵というわけではなく、バカ話にまみれつつぽつりぽつりと染み出るような文章が流麗というわけではないのですが、それらの合わせ技は、どこか切なく、どこかもどかしく、男心に不思議と刺さります。

何か、実家の片隅にある埃をかぶったおもちゃ箱の中を30年ぶりにみたような、そんな感覚。敢えて言えば、過剰なまでのリリシズム。

おそらくそれは、日常生活を送るために必要なものではないでしょう。しかし、それが人間の一部であることもまた、事実だと思います。日常にふと疲れた男性や、男心のめんどくささを覗いてみたい女性に、オススメの一冊です。

https://www.amazon.co.jp/%E7%94%B7%E3%81%AE%E8%8A%B1%E9%81%93-%E3%81%A1%E3%81%8F%E3%81%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E6%9D%89%E4%BD%9C-J%E5%A4%AA%E9%83%8E/dp/4480420983

【読書】経済成長は不可能なのか [読書]

「経済成長は不可能なのか」(盛山和夫)読了。

著者は経済学者ではなく社会学者だが、まともな知識人がまともに考えてまともに
書いた本な感じがして、面白かった。

テーマは、失われた20年という長いデフレ不況の要因と解決。

これまで、様々な専門家や経済学者が議論してきた論点。行財政改革の不徹底や、
企業の生産性の鈍化、金融政策の不備などなど、その言説は百花繚乱。

さながら、どこが卵か鶏やらの錯綜したウロボロスのようである。

著者は、「経済学説なるものは自明に正しいものはほとんどない」とした上で、
「経済現象のメカニズムにさかのぼりながら、この論争にあえて切り込んで」みる。

そして、行財政改革や歳出削減が必ずしも長期のデフレ不況を解決するわけでは
ないことを皮切りに、規制緩和など、巷間言われている要因を一つ一つ検討していく。

まるで結び目を解きほぐすようなその思考過程の行き着く先は、民間の資金需要、
特に企業の設備投資意欲の減退であり、つまり企業の「儲かる」見込みに関する
悲観的な見通しである。

さらにその要因を突き詰めれば、国内経済の空洞化をもたらす「円高」と市場の縮小を
予想させる「少子化」にたどり着く。

そこで、著者はまず1985年のプラザ合意による急速な円高に着目した。失われた20年
を、円高の「調整のために支払われた残酷なコストであった」と言い切ったのである。

この認識の下、日本経済をどのように経済成長の軌道に乗せるかという検討が進む。
経済成長をしなければ日本人全体の生活水準は維持できない。課題は4つ。

・デフレ不況
・財政難
・国の債務残高
・少子化

いずれも、あちらを立てればこちらが立たぬという課題ばかりである。

著者は、これら全てが重要であるとしつつも、その解決の順序を明確にしている。
つまり、デフレ不況と少子化である。

ユニークなのは、デフレ不況からの脱却と少子化の緩和という目的達成のためには、
政府規模の肥大化や国債残高の増加を一切恐れていないことだ。

デフレ不況から脱却し、少子化緩和の見通しが立てば、企業の投資意欲は回復し、
生産性も向上することから経済成長を果たすことができる。それによって財政難や
国債残高の減少を進めればよいというロードマップが敷かれている。

そして、本書の最終章では、ロードマップの実施により経済成長を果たす場合の
シミュレーションが、いささか駆け足ではあるが示されている。

おそらく、日本の政策論争で足りないのは、施策のパッケージとその順序と時間軸、
すなわちロードマップなのだと思う。戦略といってもいいかもしれない。

多くの経済学者ないしは政策担当者の意見は多く一般論として正しいのだと思う。

しかしそれは課題解決の一部に過ぎず、しかも経済成長を果たしていくために、時間軸の
どの段階で行われるべきか明示されてないのは、確かに不満であった。

その意味では、個々の経済学のタコツボに閉じこもっている学者や専門家の意見を
縦横に駆使して戦略を作って見せた本書は、知的に自由な本として楽しめた。

大きな目的のために時間軸を作って粛々と進めていく、わかっちゃいるけど、
自分の人生には、なかなか応用できないわなあ。。。

などと、読了後つい嘆いてしまった初夏のある日なのでした。