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【読書】かなわぬ夢、檀一雄との一献 [読書]

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『美味放浪記』(檀一雄)読了。なかなかに楽しかった。

既読の『火宅の人』『リツコその愛・リツコその死』では、天然の旅情とやらの狡さやえぐさがやや身につまされるような思いで面白苦しかったが、『壇流クッキング』や『美味放浪記』には、愉快さ痛快さが先行し安心する。

『美味放浪記』は国内外の旅と食の思い出をひたすら連ねているものだ。

太宰治と一緒に新宿の露店で買った毛蟹を歩き食いしたり、リスボン・パリ間の一等列車でむくつけき男どもが盗んできたというハモン・セラーノを削り削りともに舌鼓を打ったり、若き日に満州で間借りしたロシア人夫婦の家でボルシチを盗み飲みしたり。

開高健のように精緻な精妙な味の描写があるわけではなく、吉田健一のような自信と教養に裏打ちされた暖かさを感じるわけではないが、これはこれで印象的だ。

そうかと思えば、朝鮮半島のオンドル小屋に思いを馳せ、

「自分の死にまっすぐ直結するような、簡素で悠々たる自分の人生を作り直してみたい」

などと、ふと我に返って見せるから油断ならない。

清浄な水を床にぶちまけて行くとこまで行ってやれ、そんな潔さと強さとどうしようもなさとその自覚を、檀一雄のエッセイからは感じてしまうのである。

さて、文は人なり、とはいう。

だがかつて邱永漢は、檀一雄を評して、その文章よりも人間のほうがはるかに面白いと言ってのけた。生きていたら、一緒にだらだらと飲みにいったら楽しかろう、そんなことを檀一雄に対して思った次第なんである。



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